共晶(きょうしょう)はんだとは
【共晶はんだ=鉛はんだ】と思ってない?
バリバリ鉛はんだを使用されていたご年配の方から「君のところは共晶はんだ(鉛はんだ)使ってるのか?」と聞くことがあるのですが、実はこれ半分正解で、半分間違いなんです。
え?!違うの?と思われた方!実は違うんですよ?笑
鉛フリーの共晶はんだは存在します。
「ん?そうなってくると共晶とは何ぞや?」となってくると思いますので、その辺りのことについて詳しく説明していきます。
共晶とは
共晶とは、2種類以上の物質(多くは金属)を特定の比率で混ぜ合わせたときに、その混合物が単一の融点(共晶点)を持つ現象、またはその組成の合金自体を指します。
うん。。。よくわかんないですよね。
通常の合金(非共晶合金)は、固体から液体へ、または液体から固体へ変化する際に、固体と液体が混ざったペースト状(固液共存相)の温度範囲を持ちます。しかし、共晶組成の合金は、この共晶点という特定の温度で、固体から液体へ、あるいは液体から固体へと一気に状態が変化します。水が0℃で氷に、100℃で水蒸気になるように、明確な温度で状態が変わるイメージです。
共晶はんだの特徴
はんだは、金属同士を接合するために使われる合金です。その中でも「共晶はんだ」は、上記のような共晶組成を持つはんだのことを指します。
- 明確な融点: 共晶点という単一の温度で溶け、固まります。これにより、はんだ付け作業時の温度管理がしやすくなります。
- 速い凝固: 液体状態から冷却されると、共晶点で一気に固体になります。ペースト状の時間を経ないため、接合する部品が凝固中にずれるリスクを低減できます。
- 組成の均一性: 凝固時に組成が偏析しにくく、均一な接合部が得られやすい傾向があります。
代表的な共晶はんだ
錫-鉛 (Sn-Pb) 共晶はんだ:
- 組成: 錫(Sn) 63%, 鉛(Pb) 37% (Sn63Pb37)
- 共晶点: 183∘C
- かつて最も広く使われていたはんだです。作業性が良く、信頼性も高いとされていましたが、鉛の環境・健康への影響から、現在は使用が制限されています(RoHS指令など)。
鉛フリー共晶はんだ: 環境規制に対応するため、鉛を含まない様々な共晶(または共晶に近い)はんだが開発・使用されています。
- 錫-銅 (Sn-Cu) 系: Sn-0.7Cu など。共晶点は 227∘C です。コストが比較的安いのが特徴です。
- 錫-ビスマス (Sn-Bi) 系: Sn-58Bi など。共晶点は 138∘C / 139∘C と低いため、低温はんだとして耐熱性の低い部品の実装などに使われます。ただし、鉛が微量でも混入するとさらに融点が下がる、衝撃に弱いなどの注意点があります。
- 錫-亜鉛 (Sn-Zn) 系: Sn-9Zn など。共晶点は 198∘C / 199∘C です。
- 錫-銀-銅 (Sn-Ag-Cu / SAC) 系: Sn-3.0Ag-0.5Cu (SAC305) などが代表的です。厳密には共晶組成ではありませんが、融点範囲が 217∘C – 220∘C と狭く、共晶に近い特性を示すため、鉛フリーはんだの主流として広く使われています。信頼性が高いですが、銀(Ag)を含むためコストが高めです。
共晶はんだの利点と注意点
利点:
- 融点が明確で扱いやすい。
- 凝固が速く、作業効率が良い、部品のずれが少ない。
注意点:
- 鉛フリーはんだは、従来のSn-Pb共晶はんだ (183∘C) よりも融点が高いものが多く、はんだ付けのプロセス温度を高くする必要があります。
- 鉛フリーはんだは組成によって、濡れ性(はんだの広がりやすさ)、機械的強度、耐熱疲労性、コストなどが異なります。目的に応じた選定が必要です。
非共晶はんだとの違い
共晶はんだが単一の融点を持つのに対し、非共晶はんだは溶け始めの温度(固相線温度)と完全に溶ける温度(液相線温度)が異なり、その間の温度範囲では固体と液体が混ざったペースト状(シャーベット状)になります。この性質を利用して、特殊な接合方法に使われることもあります。
共晶はんだは、その明確な融点と速い凝固特性から、電子部品の実装など、精密で信頼性の高い接合が求められる場面で広く利用されています。特に鉛フリー化が進んだ現在では、様々な組成の共晶(または共晶に近い)はんだが用途に応じて使い分けられています
それでは、今日のブログ記事はここまでとなります。
皆さんがはんだの選択に役立つ情報を得られたことを願っています。
次回のブログ記事でも、また新たなテーマでお会いしましょう。それでは、ご安全に!